人気になる韓国時代劇には、作品の格にふさわしい名セリフが多い。その象徴的な作品が、『王女の男』と『宮廷女官 チャングムの誓い』である。今回の名セリフにも、さすがと思わせる含蓄がある。
◆『王女の男』
「生き抜いて、私を殺しに来てください」
ドキッとする言葉である。
しかし、その真意がわかると、言った人の気持ちがよくわかる。
言った人というのは、『王女の男』のヒロインのセリョン(ムン・チェウォン)だ。彼女は、甥から王位を奪う非道な首陽(スヤン)の娘である。
セリョンにそう言われたのは、主人公のスンユ(パク・シフ)だ。彼の父は首陽に殺された。いわば、愛するセリョンは父の仇の娘なのだ。
復讐を誓うスンユだが、捕らわれて牢獄に入れられてしまう。処刑は免れない。その牢獄にセリョンが訪ねてくる。
セリョンの素性を知ったスンユは彼女の首をしめようとする。それは憎悪のなせるわざか。あるいは、騙されたことの腹いせなのか。
しかし、セリョンは愛するスンユのことだけを考えている。「私を殺しに来てください」と言えば、スンユが執念を燃やして、なんとしてでも生き抜くかもしれない。
「どんな形でもいいから、生きていてほしい」
その願いを込めて、セリョンは恐ろしい言葉を言ったのだ。
セリフの迫力に圧倒される。(ページ2に続く)