金大中大統領の教訓
戦後の日韓関係で最良の時期だったのは、1998年に金大中(キム・デジュン)大統領と小渕首相が「日韓パートナーシップ宣言」を結んだときだった。
金大中大統領は歴史問題を持ち出さずに未来志向で日韓関係を良好に導いた。同じ革新政権の文在寅大統領には、ぜひ金大中大統領を見習ってほしい。
幸いに、文在寅大統領はかねてから歴史問題を分けて日韓関係を考える姿勢を示している。そこが、能力が欠けた朴槿恵前大統領との大きな違いだろう。
まずは、文在寅大統領は早めに日本との首脳会談に臨むべきだ。何よりも、対話が欠かせないのである。
そして、懸案の従軍慰安婦問題に関しては、拙速に見直しを日本に要求するのではなく、国内で日韓合意に至った経緯を検証することだ。どこに問題があったのか。そのことを国内で突き詰める必要がある。そのうえで、時間をかけて対応を決めていけばいい。
重ねて強調するが、まず必要なのは日韓首脳の信頼構築だ。その際には、歴史問題を分けて考えること。金大中元大統領の19年前の政治姿勢を新しい文在寅大統領もぜひ踏襲してほしい。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
康熙奉(カン・ヒボン)
1954年東京生まれ。在日韓国人2世。韓国の歴史・文化・社会や日韓関係を描いた著作が多い。最新の著作は『朝鮮王朝と現代韓国の悪女列伝』。