平凡な暮らしこそが幸せ
この作品で特筆すべきは、抑えた演技で脇役を演じたソン・スンホンの姿ではないでしょうか。
胸からネームプレートを下げ、同僚と屋上で缶コーヒーを飲む区役所職員。同僚の吸いかけのタバコを奪って、「この節約で息子が使うクレヨンのクオリティが上がるんだよ」と、なんとも涙ぐましい普通のパパぶりが全開のソン・スンホンなんて、果たして想像できますか?
クール、ワイルド、セクシー、御曹司……そんな形容詞は今回のソン・スンホンにはまったく似合わないのです。
セクシーなソン・スンホンを堪能したければ『情愛中毒』をぜひご覧いただくとして、今回は普通すぎるソン・スンホンをたっぷり味わってみてはいかがでしょうか。
妻と家族を何よりも大切に思っている愛妻家を演じたソン・スンホンの受け身の演技がこの作品の大きな魅力になっています。
ヨヌが、お金の本当の価値や家族の愛を知り、人にとって本当に大切なものは何なのかに気づく。涙と笑いで教えてくれるこの作品は二度、三度と繰り返し見たくなるような不思議な魅力に溢れています。
平凡な暮らしこそがどんなに幸せなことなのか。この作品を見て改めて感じることができるでしょう。
そして映画『ミス・ワイフ』は、「もしも、うちの夫がソン・スンホンだったら!?」という、嬉しい夢を見させてくれる作品でもあります。124分という上映時間があっという間に過ぎるほど心から楽しめる映画ですので、ぜひぜひご覧になってくださいね。
文=朋 道佳(とも みちか)