演じる役を制限される傾向が強い
意外とも思える性格を持ったウォンビンなのだが、やはり、美しいほどの容姿を持った影響はあまりに強かった。
人々は彼の外見にとらわれて、実際にはそんなに演じていない洗練された都会的なイメージだけを記憶している。出演依頼がくる作品も、主に保護される役ばかりだった。
韓国の美男俳優の代表ともいえるチャン・ドンゴンがかつて「自分の容姿が演技には邪魔になっていて悩んでいる」と語ったことがある。一般の男性からすると羨ましいかぎりのことでも、本人は深刻に悩むのである。ましてや、ウォンビンの場合は、演じる役を制限される傾向もあった。
特に、映画『母なる証明』(2009年)でウォンビンが担った役は、“保護される”という点では以前と同じだった。むしろ、最も弱くて誰かの保護なしには生きていけない役だったともいえる。
田舎を舞台にして、殺人の容疑者になってしまった息子の無罪を証明するために奮闘する母を描いた映画『母なる証明』。ウォンビンのファンはガッカリするかもしれないが、実はこの映画は、国民の母とも呼ばれている名女優キム・ヘジャのための映画だった。ポン・ジュノ監督は最初からキム・ヘジャを念頭において構想を練ったと公言していた。キム・ヘジャの出演が不可能だったら映画製作はしない、と断言したこともある。
しかし、ウォンビンは単独主演も可能な作品を次々に断って、キム・ヘジャが主役の映画を選んだ。そこには、彼のどんな思いが込められていたのか。(ページ3に続く)