『秋の童話』のイメージが強烈
ウォンビンは少ない出演作とは裏腹に、あまりにも様々な役を演じてきている。ここが特に重要である。
おそらく、多くの人々が持っているウォンビンのイメージは、トレンディ―で都会的なセンスというものだろう。
しかし、ウォンビンが都会的な男の役を演じたことは少ない。多くの人は彼がカッコいい役ばかり演じてきたように思っているが、そんな役は『秋の童話』を含む初期の2、3本だけだ。デビューと共に作られたイメージが、あまりにも彼の外見と似合うため、ファンは以後も同じイメージだけを記憶し続けてきたのだ。
そういう意味では、ウォンビンは外見が自分自身のハンディになる悲運の俳優とも言える。主役級として映画にデビューして以来、ウォンビンが演じてきた役は『ガン&トークス』『ブラザーフッド』『マイ・ブラザー』『母なる証明』など、大体は田舎臭くて子供のような男ばかりだった。
それにも関わらず、ウォンビンという俳優を語るとき、まずは都会的なイメージが浮かぶ。それはなぜなのか。彼が限定されたイメージを持つようになったのは、彼の出世作となった『秋の童話』での世間知らずの御曹司という役が強烈だったからだ。
愛する人に対して自分だけを愛してくれることを懇切に願う彼の姿は、洗練されていながらも、一方では母性本能をくすぐる“ウォンビンらしさ”を定義する基準となった。しかし、先にも言ったように、いかにもウォンビンらしい役を彼が演じたのは『秋の童話』だけである。(ページ3に続く)