会社をやめる決断
「もし、IMF危機が来なかったら俳優にはならなかったと思います」
チ・ジニは率直にそう語る。
この「IMF危機」とは、1997年に韓国を襲った未曾有の経済危機のことである。IMF(国際通貨基金)から莫大な融資を受けなければならないほど、韓国の国家財政は危機に瀕した。当然ながら企業の倒産が相次ぎ、チ・ジニが勤めていた会社も危なくなってしまった。
リストラが必至の状況の中で、彼は「年が下の自分が真っ先に身を引くべき」と考え、芸能界への転身を決意した。
「誰かが辞めなければならなかったんです。一番年下の自分がやめるべきだろうと思い、1年だけ俳優としての可能性にかけてみることにしました」
しかし、芸能界は甘くはなかった。
やはり、そこは未知なる世界。チ・ジニは慣れない業界で苦労をして、さしたる成果をあげられなかった。俳優とはいっても、アルバイトで写真の手伝いをしなければならないときもあった。
それでも、一応はドラマ『ジュリエットの男』に出演するが、演技力不足もあって、さして注目されなかった。(ページ3に続く)