チャングム役の依頼を受けた
再びスクリーンに戻って主演した『JSA』が興行的にも大成功し、『インシャラ』の雪辱を見事に果たした。
ようやく彼女は、心にくすぶっていたコンプレックスを払拭することができた。
2001年には続けて『ラスト・プレゼント』『春の日は過ぎゆく』でも主役を務め、すっかり映画女優としての貫祿を身につけた。
そのあとはしばらく俳優業から遠ざかった。特集放送の司会とCF出演以外には、表立った活動がなかった。もちろん、出演オファーが次々と持ち込まれたが、彼女は首を縦に振らなかった。
人の何倍もの努力でようやく自信らしきものが芽生えた彼女は、ゆっくりと時間をかけながら望ましい役を待っていた。そんな中で持ち込まれたのが、チャングムという朝鮮王朝時代の一人の医女の一代記だった。
監督は時代劇でヒットを連発していたイ・ビョンフン。魅力的な演出家だが、不安のほうが大きかった。
時代劇となると、1995年に出演した『西宮(ソグン)』以来のことで、長いブランクが気になった。ただ、不遇な環境の中から王宮内で力強く成長する女性の生き方に興味をもった。
「どんな役を演じるにしろ、意気込んでよくできる場合もあれば、流れに従ううちに条件が揃ってよくなる場合もあります。今回は親しい知人たちに相談したら、みんなが『ぜひやりなさい』と言ってくれました。それで決心しました」
このように、イ・ヨンエは周囲の助言が力になったと告白している。
(後編に続く)
文=康 熙奉(カン ヒボン)