第27回 並ぶのは時間の無駄という考え方
エンドロールで席を立たない
平日の午前11時に渋谷で地味な映画を見た。
ガラガラだと思ったら、空いていたのは最前列だけ。年配の人たちが、しっかり座席を埋めている。
仕方がないので最前列に座り、できるだけ視野を広く取ろうと務めながら、必死にスクリーンを凝視し続けた。
目が疲れた頃、ようやくエンドロールになった。
誰も席を立たない。
スクリーンにはスペイン語の人名が次々に映し出されている。
結局、エンドロールが終わって明かりがつくまで、すべての観客が自分の席でジッとしていた。
私はトイレに行きたかったのだが、出るに出られなかった。これが日本の映画館なのである。
観客も、エンドロールをクライマックスの一部と考えている。それを見ないで帰ることは、映画を完全に見たことにならない。
もちろん、エンドロールの途中で帰る客もいる。それでも日本では、エンドロールが終わるまで席に留まる客のほうがずっと多いだろう。
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