『パパ』で父親役に挑戦
ペ・ヨンジュンは他の俳優以上に映画に特別な思い入れがあった。それだけに、もっとテレビドラマで演技を磨いてから映画に進出したいと考えた。人気だけを優先させて中途半端な状態で映画に出るのだけは避けたかったのだ。
慎重なこの姿勢は大いに評価されていい。彼は常に一歩一歩大地を踏みしめながら、自分の行く道を決めていくタイプの人間なのである。
映画への進出を見送ったペ・ヨンジュンが、次の連続ドラマに選んだのが、イ・ヨンエとの共演になった『パパ』だった。
これは、完全にファンの意表をつく作品である。なにしろ、まだ23歳のペ・ヨンジュンが、離婚して子供を育てる役に扮することになった。10歳くらい上の俳優が演じるような役にペ・ヨンジュンは果敢に挑戦してみようと思った。このあたりの決断は、度胸がすわっていると言える。
このドラマが放送中だった1996年1月、「イルガンスポーツ」の紙面にペ・ヨンジュンのインタビュー記事が掲載されている。その中でペ・ヨンジュンは『パパ』の役柄について自らこう答えている。
「離婚して娘を育てる大学の講師役です。『愛の挨拶』では大学一年生を演じましたし、『若者のひなた』では大学生から映画監督までを経験しました。今回は大学講師として出演するのですから、進級はかなり早いと思いますね」
演じる役の変化を「進級」と称するところがなんともおかしい。確かに、わずか2年で大学一年生から講師にまで変身しているのだから、その飛躍は驚くほど早い。いや、ちょっと早すぎたかもしれない……。
(次回に続く)
文=康 熙奉(カン ヒボン)