政治介入にNOを言う
康「韓国の映画はテレビとは全然違います。テレビは、ちょっと暴力シーンやキスシーンがあるだけでもダメなのに、映画は暴力を含めていろんな形で見せます。それで、テレビと映画の違いが鮮明なんです」
慎「イ・ビョンホンさんが主演した『インサイダー』という映画があります。政治と財閥とメディアの癒着を描いていますが、韓国で18歳未満は見ちゃダメな作品なのに、観客が900万人を越えています」
康「18歳未満禁止が900万人というのはすごいよね」
慎「まず考えられないですよ」
康「中高生は見られないわけでしょ」
慎「僕が『映画がヒットすると、日本だったら当然パート2、パート3といって続編が出ます』とイ・ビョンホンさんに言ったら、『自分の主演した映画がヒットしてたくさんの人に見られて話題になることは、俳優としてはすごくうれしいし、やりがいがある。ただ、韓国人として見たときにああいう映画がヒットしているということは、韓国社会にまだまだ問題があるということなんだ』と言うんですよ。この十数年に韓国でヒットしている映画を選んでいくと、社会の問題を告発する映画ばかり。そういう映画がヒットしている背景は、韓国社会全体に問題があるということを韓国人みんながわかっているということなんですよ」
康「なるほどね」
慎「社会の問題を映画が代理的に表現してくれて、それをわかっていてみんな見に行くわけじゃないですか。イ・ビョンホンさんだけではなく、映画に携わる人たちが信念を持ち、単純なヒット主義に走らず頑張っている姿が新鮮でしたね」
康「韓国の映画監督は、すごく問題意識を持っている人が多いよね」
慎「釜山国際映画祭が前に『ダイビングベル』というセウォル号事件のドキュメンタリーの上映を企画したら、政権のほうからストップがかかったらしいんです。それでも釜山国際映画祭の委員長が上映させました。それで、その委員長はクビになったんですよ。すごく政治介入だということで、俳優や監督を含めて映画関係者が反発していました」
康「そうでしょうね」
慎「もちろん介入した政権も問題ですけど、それに対してエンタテインメントというポジションにいる人たちがはっきりとNOを言う。そういうところは、日本にはなかなかないと僕は思います」(ページ3に続く)