対談「アジアの中の日本と韓国」(小原宏延⑤)

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日本に韓流ブームをもたらした「冬のソナタ」のロケ地・南怡島(ナミソム)

日本に韓流ブームをもたらした「冬のソナタ」のロケ地・南怡島(ナミソム)

第5回/韓流ブームは日本に何を残したか

小原「韓流という文化ウェーブは、すごく大きな時代を日本で刻みましたね。ただし、韓流はもう終わったとか下降したとか、そう言われてきました。最初の『冬のソナタ』に一番象徴されますが、あの盛り上がりが圧倒的過ぎて、みんな目からウロコが落ちるように韓流に興味を持った。日本人で、韓国に先入観を持っている人たちでも『とにかくこれは面白い、すばらしい』『情感にものすごく訴える』『素敵なスターがいっぱいいる』ということで、日本史の年表にかならず残るくらいの大ブームがきました」

康「2004年のことですね」

小原「韓流の『流』という字は流行の『流』でもあるので、流れというのはいつか変わりますが、どうなんでしょうか。韓流が残したものは結局何だったのかなと思いました」

康「韓流とは何か。一番は日本人に『隣の国は韓国なんだ』ということをはっきりと示したことですよ。韓流以前の日本では欧米一辺倒というか、一部の人を除いて隣に韓国があっても見ていなかったと思います。でも、振り向いたらそこに韓国という国があり、面白いドラマを作るし、かっこいいスターがいっぱいいることに気づかされました。これは、すごいときめくことなんですよね。今まで知らなかったことがわかるのは精神の転換期になる。以前から韓流は中国や東南アジアでもかなり人気を集めていたのですが、日本はまだまだ韓国の大衆文化には興味を示していませんでした。『冬のソナタ』という傑作があって、日本は韓流に参っちゃったんですね」

小原「コロリとやられた感じでね」

康「今言ったように、韓流は何かと言われたら、やっぱりペ・ヨンジュンでありチェ・ジウであり東方神起なんですよ。つまり、他のものは日本にもあるが、あの韓国的なスターは日本にいなかったわけでしょ」

小原「そうですね」

康「なんでペ・ヨンジュンがあれだけ熱狂的に受け入れられたかというと、日本にいないタイプのスターだったわけです」

小原「どこでもいないものに熱狂しますからね。ずっと昔はアラン・ドロン、それからしばらく経っていろいろなアメリカの人気俳優がいますが、それがいきなり日本のすぐそばの韓国でアジア全体のスターが立ってしまったのです。『冬のソナタ』でいえば、映像も音楽も非常によく作られています。特に韓国は音楽が得意で、とても優れていると思います」

康「昔から歌と踊りが好きな国民性で、芸能に関しては才能があるんですよ」

小原「それで、一部には『韓流は国策なんだ、国が仕組んで海外で打って出た戦略なんだ』と言う人がいますが、それがやっぱり演じる人やそれを作りあげる作家たち、進行するスタッフたちが揃わないと、絶対にどこでも捨てられてしまうのです。僕が好きな東南アジアでも、韓流は完全に定着していて、未だにファンがいて雑誌に必ず僕の知らないスターが載っているわけです。それはマレーシアやベトナムであれ、タイなんかでもそうなので、非常に範囲が広いんですよ」




康「最初は、東南アジアで韓流が受けているのが不思議でしたけど」

小原「先に、日本の『おしん』が人気になった。一種の教育ドラマという要素もありました。韓国ドラマは教育というよりエンタメで十分に熱中させますね。やっぱり、日本と韓国は兄弟みたいな関係があるのですが、微妙なズレがありました。もちろん長い歴史は違うし、見ていて違いと似たところがあります。その微妙な距離感がいい方向に出たり、そうでない方向に出たり……」

康「そうですね」

小原「僕もいくつかの国に行きましたが、行って嫌いになった国は1つもありません。大体いいことのほうが多いんですよ。そこに住むということとは違いますが、その関心が自分の中で刺激されて、それで文化を知るという意味になる」

康「まず感じるのは、食事が口に合うかどうか」

小原「韓国料理も非常にうまいし、クセもあるし、中には好き嫌いもあります。ただ辛いというだけでなく、種類が豊富でびっくりしました。どんなものにでもキムチがつくとかセット的なんです」

康「いっぱい出てきますよね」

小原「1つのものを頼んだのに3、4種類の小皿が出るのが当たり前です。やっぱり食べ物は大事ですね。それから、韓国人はとても情が深い。旅行者の一番の楽しみは何かというと、現地の人と触れ合うことなんです。そこに住んでいる人たちと出会って会話をしたり、一緒に食事をしたりします。そういうところに旅の醍醐味があると思えば、韓国人はとても情が深くて日本人とよく似ているんです。日本人が韓国に行く、あるいは韓国人が日本に来るということは、それ以前に持っていた違和感が解消できるほど親しみを感じると思います。もちろん、これは意地悪な意味ではなくて、似ているから逆にお互いの気に入らないところを突っ込みたくなるのです」

康「それもありますね」

小原「要するに、遠い人とは縁が薄いから喧嘩もしませんが、近いと好きなものほど相手を嫌うというか、逆に突っつきあうものなのです。韓国は、中国や台湾よりも日本に一番近いでしょ。その韓国から日本に伝わったものも多いのだから、もっと韓国のことを知るという姿勢がいつになっても必要だと思います」

(文=「ロコレ」編集部)

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